AIに仕事を任せるとき、多くの人がまず試すのは「一体に全部やらせる」やり方だと思います。私も最初はそうでした。
企画も、書くのも、チェックも、振り返りも、ぜんぶ同じ指示の中に詰め込む。一見すると効率的です。指示は1つで済みますし、途中のやり取りも要りません。
ただ、これは高い確率で失敗します。今回はその理由と、代わりに何をしているかを書きます。
万能な一体は、自分の仕事を評価できない
うまくいかない理由は、能力の問題ではありません。同じ主体に「作る」と「評価する」を同時にやらせていることが問題です。
人間で考えると分かりやすいと思います。自分が3時間かけて書いた文章を、書き終えた直後に自分で厳しく採点できる人は、あまりいません。誤字は目が滑って見えなくなりますし、「この構成でよかったのか」という根本的な問いは、もう考えたくない。作った直後の自分は、その成果物にとって最も甘い評価者です。
AIも同じことが起きます。「書いて、そのあとチェックして」と1つの指示に入れると、たいてい自分の出力を肯定します。悪気があるわけではなく、直前の文脈に引きずられるからです。
そして厄介なのは、その甘い自己評価が「チェック済み」というラベルで出てくることです。人が見るときには、もう検品が終わったように見えている。
4つの役割に分ける
私が自社の運用で使っているのは、役割を4つに分ける形です。
① 企画 — 何を作るか、誰に向けて、どういう基準を満たせば合格かを先に決めます。ここで基準を書き出しておかないと、後の工程が全部ぶれます。
② 制作 — 決まった基準に沿って実際に作ります。ここは量をこなす工程なので、速さを優先して構いません。
③ 品質チェック — 制作したものを、制作の文脈を持たない状態で採点します。ここが肝です。「よく書けているか」ではなく、①で決めた基準を満たしているかだけを見ます。基準未満なら差し戻す。
④ 分析 — 差し戻しが多い箇所を集計して、①の基準や②のやり方を直します。同じ失敗を2回しないための工程です。
ポイントは、③が②の続きではなく、別の役割として立っていることです。同じAIを使っていても、渡す情報と役割を分ければ、自己肯定はかなり減ります。
工程の間にゲートを置く
役割を分けただけでは足りません。②から③へ、③から次へ進むところに、通過条件を置きます。
私の場合は三軸で採点しています。プロセスが守られているか、成果物の質、そして事実やデータの裏付け。合計が基準に届かなければ、その時点で差し戻して先に進みません。
これは面倒に見えますが、実際にはこちらのほうが速いです。基準未満のものが最後まで流れていって、人が最後に全部やり直すのが、いちばん時間を失うからです。
前に書いた700ページの話も、結局はこれでした。ゲートがないまま量産したので、最後に人が全部見る羽目になった。
人はどこにいるのか
4つとも自動で回るなら人はいらないのか、というと、そうではありません。
人が握るのは**「これを外に出してよいか」の最終判断**です。③のゲートは基準を満たしているかを機械的に見ているだけで、「今このタイミングで、この相手に出してよいか」までは判断できません。そこは人の仕事として残します。
もう1つ、基準そのものを決めるのも人です。①で書き出す合格条件は、その事業をやっている人にしか書けません。ここを外注したり自動化しようとすると、全体が崩れます。
逆に言えば、人がやるべき仕事はこの2つに絞れます。作る作業ではなく、決める作業だけが残る。これが「少人数で回す」ということの実際だと思っています。
一人の事業でも意味があるのか
あります。むしろ一人のほうが効きます。
複数人の組織なら、書く人とチェックする人が自然に分かれます。一人だと、その分離が構造的に存在しません。自分で書いて、自分で見て、自分で出す。甘くなるのが当たり前です。
役割を分けるというのは、一人の事業において組織なら自然にあったはずの分離を、意図的に作り直すことだと考えています。
最初にやるとよいこと
いきなり4役に分けようとしなくて構いません。まず③だけを独立させるのがおすすめです。
作るところは今のままでいい。ただし、出す前に「基準を満たしているか」だけを見る工程を1つ挟む。その基準を、面倒でも一度文章に書き出しておく。
これだけで、差し戻しが起きるようになります。差し戻しが起きるということは、今まで基準未満のものが素通りしていたということです。そこが分かるだけでも、次の判断がしやすくなります。
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